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My important place【D.Gray-man】

第44章 水魚の詩(うた)



俺の知らない所で、俺の知らない思いを一人背負ってきた雪。

人間なんてそんなもんだ。
同等の立場であったって、他人の人生に介入はできても全てを理解し得ることはできない。
他人の心を、奥底まで理解することなんて不可能だ。

俺とアルマがそうであったように。

俺は俺で、雪は雪。
雪が背負ったもんの重みは雪にしかわからないし、俺が抱えてるもんの重みは俺にしかわからない。
昔もそう当たり前に思っていたし、雪は尚の事他人に甘えない奴だからと理解もしていた。

他人の全てを自分のもんになんてできない。
そんなこと、不可能だ。

わかってる。
わかってんだよそんなこと。
だから俺とアルマも、あんな最後しか迎えられなかった。

共に生きる道を、歩めなかった。



「馬鹿だろ、本当」



わかってる。
でもだからって、詰られずにはいられなかった。






なんで微かな片鱗でも気付けなかったんだ、俺の馬鹿が。






異変の欠片は其処ら中に落ちていたのに。
雪がモヤシの退魔の剣を胸に受けた時、頑なに額を隠す仕草に気付けていたら。
一度俺の部屋で覚醒し掛けた時に、その悲鳴を耳にできていたら。
もっとしっかりこいつのことを見て、些細なことに気を尖らせていたら、見逃さずに済んでいたかもしれない。
今ここで鎖に繋がれて、怪我を負って、辛うじて命を繋いでいる状況になんて陥っていなかったかもしれない。



「………」



囚人服を身に纏った、目の前の雪を直視できない。

胸がざわつく。
心が、



「…ッ」



焦燥感。

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