My important place【D.Gray-man】
第14章 黒の教団壊滅未遂事件
「此処、コムイ室長の実験室らしいんですよ。此処なら機器が揃ってるから、ワクチンも作れるってバク支部長が」
ひょこりと顔を覗かせた蝋花さんの言葉に、成程と納得した。
科学班の研究室は亡者で埋まってたらしいから、それなら頼るのは此処しかない。
にしても…こんな拷問部屋みたいなものまで作ってたんですね…。
アレンが室長に実験室で左手の修理をされる度、心底嫌がってたのも納得した。
「とりあえず、まずは採血だ。蝋花、手伝ってくれ」
「はいっ」
てきぱきと隣部屋から道具を用意する支部長達を見守りながら、ほっと息をつく。
よかった。ワクチンが出来たのなら、この事件もどうにか沈静化しそうだ。
──ただ。
「すまない、月城。最低でも30分は様子を見ないと。それまで辛抱してくれ」
「あ…はい、」
血液採取をしたり、脈を測ったり。
てきぱきと身の回りの検査を終えても、手足の錠が外されることはなかった。
まぁ、そうだよね。
初めて人に投与したものだから、きちんと結果を出さないと。
そういうことは素人の私より、専門のバク支部長の方が詳しいだろうし。
「できる分だけ作り終えたら、近場からワクチン投与をしていこう。その時は神田、頼むぞ」
「…わかった」
面倒臭そうにバク支部長に視線を向けるも、神田も渋々と頷く。
神田が護衛としているなら、支部長の安全もそれなりに確保されるだろうな。
「すまないな、月城。何かあったら呼んでくれ」
「わかりました。こちらこそ、お手伝いできなくてすみません」
「なに、こういうことは僕らの仕事だ。君も大変な思いをしただろう、ゆっくり休んでいてくれ」
ぽん、と軽く支部長の手が私の肩に触れる。
笑顔を残して、そのまま隣の実験室へと去っていった。
いつもは頼りない印象の支部長だけど、今回ばかりは救世主に見える。
こういう時の相手を重んじる姿勢も、コムイ室長と似ていて上に就く器のある人なんだなぁと思い直した。