My important place【D.Gray-man】
第14章 黒の教団壊滅未遂事件
「じゃあ、無事にワクチン完成したの?」
正気に戻ったって、蝋花さん喜んでたし。
体にもウイルスに侵されたあの不快感はない。
というか此処、そもそも何処──
「月城!」
荒々しく扉が開く音と、立て続けにバタバタと駆け寄る足音。
視界に映り込んだのは、ぱっと明るい薄めの金髪。
「よかった、効いたのか…っ!」
安堵の表情を浮かべながら、ベッドに齧り付いてくるのはバク支部長だった。
「よかった、本当に。ゴーレムには効いても人間に効くかは、わからなかったからな」
「ゴーレム?」
ほーっと息つく支部長の帽子の後ろから、ひょっこりと顔を見せる金色の丸い球体。
…あ。
「ティム」
パタパタと羽音を響かせて飛んだそれは、ぽちょんと私の胸元に着地した。
小さな手足でちょこちょこと傍にきて、ぽちょ、と球体を私の顔に押し付ける。
しゅんと羽を下げて擦り寄る動作は、まるで謝罪しているかのようにも見えた。
「戻ったんだね…よかった」
どうやらティムキャンピーも、バク支部長のおかげで正気に戻してもらったみたいだ。
「ありがとうございます、バク支部長。ワクチン作ってくれたんですね」
「ああ、いや。神田がクロウリーの血を採取していてくれたから助かったんだ」
そういえば、いつの間にクロウリーから血なんて取っていたんだろう。
「偶々だ」
目線で問えば、多くは語らず。
神田は近くの壁に腕を組み、背を凭れた。
「一応、身体検査だけはさせてくれないか? それまでは悪いがこの状態でいて欲しいんだ」
「はい。大丈夫です」
ここでもし私がまたウイルスをばら撒く結果になっちゃったら駄目だもんね。
念には念を。
「でも、よくこんな手錠付きベッドとかありましたね。此処は──」
ぐるりと、寝たまま辺りを見渡す。
「……なんですか此処」
見えたのは、天井からぶら下がった鎌や鉈みたいな刃の数々。
壁には巨大なドリルやチェーンソーまで置いてある。
何これ、何この部屋。
何処の拷問部屋ですか。
ジェイソンとか出てくるんですか怖い。