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My important place【D.Gray-man】

第44章 水魚の詩(うた)



ノア一族の一人、スキン・ボリック。
甘いものが好きだとほざく、図体がでかいだけの頭の悪い大男だった。
図体に比例して動きは鈍く隙だらけだったが、反対に耐久力と攻撃力は桁違いに高かった。
何度六幻で斬り込んでも平気面で、早々膝を付くことなんてなかった。

六幻の二幻式じゃ倒せなくて、三幻式で俺の命を六幻に吸わせて破壊に至った。
それでも一度倒したと思った直後に起き上がったそいつは、最後の最後で桁違いの馬力を見せた。

どこにそんな力が残っていたのか。
どこからそんな力が湧いてくるのか。

巨大な雷の塊みたいな衝撃波を放ってきたそいつを、六幻を盾にしながら睨んだ先。






"イノセンスは…許さ…ない"






まともな意識さえも残っているのかよくわからない顔で、そいつは虚ろにそんなことを呟いていた。






"許さない…───"






"イノセンスは許さない"

そう繰り返していたスキン・ボリックの額の十字の聖痕が、一つの巨大な十字跡へと塗り換わる。
目が眩む程の衝撃波の閃光ではっきりとは見えなかったが、そいつの背後から何かが覆い被さるように、頭に重なるのが見えた。

薄らと透けて見えた半透明な存在。
人の形をしていたように見えたが、目も髪も鼻も耳も見当たらなかった。
白い影のようなものがスキン・ボリックの背後から覆い被さって、剥き出しに笑った口元が、そいつの額の大きな聖痕に重なり合う。
瞬間、膨らんだ衝撃波の威力で六幻は粉々に砕け散った。

それでも俺の命を使って繋ぎ合わせた六幻の刃で、最後にはどうにか倒すことができた。



…あのノアに勝てたのは、俺だったからだ。
武器の相性は最悪だったが、能力の相性で言えば適当だった。
命を焼き尽くすような、本物の雷のような凄まじい衝撃波。
あんなもんをぽんぽん喰らってたら、モヤシや兎じゃ耐えられない。
スキン・ボリックとの死闘の所為で、俺の命も大分削られた。






「ユウ、」

「───!」






はっとした。

目の前で名前を呼ぶ雪の声に、ノア野郎のことで考え込んでいたことに気付く。
…何やってんだ俺は。
今は、んなこと考えてる時じゃねぇだろ。

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