My important place【D.Gray-man】
第14章 黒の教団壊滅未遂事件
目を開く。
ぼんやりとした焦点に、人影のようなものが見えた。
「雪さん…!?」
聞こえた声は、高い女性特有のもの。
…この声は。
「…蝋花、さん…?」
「よかった…! 正気に戻ったんですね!」
ぼんやりとした焦点が段々と定まる。
見えたのは、二つのおさげ髪をした眼鏡姿の可愛らしい女性。
やっぱり蝋花さんだ。
「バク支部長呼んできますからっ待ってて下さいっ」
「…あ」
うるっと涙ぐんだかと思えば、ばたばたとその場から離れていく。
その姿を目で追おうと体を起こそうとすれば、ガチッと何かに動きを止められた。
え、何。
「なん──…え。」
何事かと視線を上げて、見えたのは寝ている私の顔の横。
手首に繋がれているのは、どう見ても厳つい手錠。
「な、何これ…っこっちも!?」
慌てて体を動かせば、ガチャガチャと手錠と鎖の音が鳴る。
ベッドらしきものに寝かされた状態で、私の四肢を拘束していたのは全て厳つい錠だった。
重たい鎖はベッドの四隅の柱に巻き付いていて、身動きなんて取れない。
「ゾンビウイルスに感染したんだ、仕方ねぇだろ」
突如届いたのは、聞き覚えのある男性の声。
視線だけ向ければずっといたのか、ベッドに寄る神田の姿が見えた。
その姿は最後に見た時と同じ、警護班の制服姿。
ということは…やっぱり私は、神田に担がれていた時にゾンビになってしまったんだ。
「だ…大丈夫、だった…? 私、神田を襲ったりとか…」
未だに腫れた頬と怪我した手の痛みはあったけど、その他で大きな痛みは体にはない。
襲ってたなら、あの神田のことだから遠慮なく私を打倒すると思う。
「してねぇよ。その前にお前、意識すっ飛ばしたからな」
「え?」
「途中で起きてウイルスでもばら撒かれたら困るから、拘束させてもらった」
確かに神田に担がれている途中で意識は遠のいたけど…あれはゾンビになってしまったからだと思ってた。
気絶してたんだ、私。
…ちょっとほっとした。