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My important place【D.Gray-man】

第44章 水魚の詩(うた)


──────────

「…ユウ…」

「なんだ?」

「…もう…大丈夫…涙、止まった、から」


 声を上げて泣き続けて、俺の体に縋り続けて、雪は暫く時間を費やした。
 何度もしゃくり上げていた嗚咽がやがて治まって、大きく震えていた体にも落ち着きが出てくる。
 くすん、と小さく鼻を鳴らしながら雪は俺の胸に押し付けていた顔を離すと、ゆっくりと視線を上げた。

 まだ少し辿々しい声で、だけどしっかりとその両の目は俺を捉えていた。
 涙で真っ赤に濡れた目は、もう濁り淀んではいない。

 腕の拘束を少し緩める。
 距離を開けて顔色を伺っていれば、雪の小さな手が俺の服を掴んだ。
 その些細な行動にも心が揺れる。
 離れまいとする姿に、確かに感じたのは愛おしさ。


「目、腫れたな」

「…うん」


 真っ赤に濡れた目元を指先で軽く撫でれば、ぎこちなく雪の視線が落ちる。
…これは照れてる時の態度だな。

 涙で目を腫らした姿なんて初めてでずっと見ていたい気もしたが、このまま放置できない問題がある。
 目元に触れていた指先を下ろして、涙で濡れた頬のガーゼを示した。


「何があったんだ、これ」

「……」


 雪の体中を覆っている包帯は、到底無視できるもんじゃない。
 俺が離れていた二日間の間に、雪の身に何があったのか。

 敵であるノアという存在に変わってしまったからと言って、拷問紛いなことをあのコムイがするとは思えない。
 事故か、コムイでない他の誰かの手によるものか…もしくは、雪自身で傷を負ったのか。

 ガーゼを示して問えば、雪は沈黙を作った後にゆっくりと口を開いた。


「これは……イノセンスに、負わされたの」


 告げられた内容は、予想外のものだった。

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