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My important place【D.Gray-man】

第44章 水魚の詩(うた)



 薄暗い地下通路の奥へと進む。
 冷たい空気に錆びた鉄の臭い。
 それはアルマと過ごしたアジア第六研究所の地下にも似ていて、つい眉間に力が入った。

 兎に託られた雪の言動。
 それを聞いて、ティエドール元帥に背を押されて、マリの助言を受けて、此処へと赴いた。

 俺に会わせてくれるなら、どんな処遇でも受けるだなんて…何馬鹿言ってんだあいつ。
 そんな取引、許されないことは誰だってわかるだろ。

 自分の首を自分で絞めてる雪に、僅かに苛立ちが湧く。
 それは昔に雪の虚ろな表情を見る度に、感じていた苛立ちに似ていた。
 もやもやとした、曖昧な形のない感情。


「なんだ…っ?」


 目的の場所に近付けば、見えてきたのは重そうな扉の前で見張りをしている警護班。
 三人か…問題ねぇな。


「止まれそこ!」

「面会の許可は受けてないぞ! 止まらんかンぐほっ!?」

「な、なんつーことを…ヒィっ! こっち来んな!」


 生憎この薄暗さじゃ、近付かないと顔はわからない。
 足先に力を入れて地を蹴る。
 相手が俺の顔を判断する前に、一気に距離を縮めた手前の男の顎目掛けて、下から掌底で衝撃を叩き込んだ。

 大きく揺さぶられる男の後頭部。
 そのまま声もなく倒れる男に、後方の警護班連中が悲鳴を上げた。


「お前…っこんなことしてタダで済むと思うなよ…!」

「鬼だコイツ! 鬼がいる…ッ! げグッ!?」


 大の男の癖して、退け腰でビビる二人目の警護班の首筋に一打。
 残り一人。

 震えながらも扉の前に立つそいつに、


「く、来るな!暴行罪でお前を──」

「邪魔だ退け」

「ぁが…ッ!」


 吐き捨て混じりに鳩尾に一打をくれてやった。

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