My important place【D.Gray-man】
第44章 水魚の詩(うた)
『とりあえず、あそこでイノセンスの情報収集してみよう』
『なんでわざわざあんな所にすんだよ。別でもいいだろ』
『人の出入りが多い場所は、それだけ情報も集まるでしょ。神田は待ってていいよ。私だけで行ってくる』
『……』
ガキの癖して、ファインダーとしては頭が回る
こいつの発案に言い包められて、渋々従ったことは何度もある
腑には落ちなかったが、それでも任務にはそれなりに役立つ
だからそこに文句を言ったことはない
…それ以上に文句があったのは、こいつのその"顔"だ
『すみません、少しお伺いしたいことがあるのですが』
『…あ? 此処はいつから餓鬼の出入り許可が出たんだ?』
訝しげに見てくる柄の悪い野郎相手でも、顔色一つ変えない
当たり障りなく作られた建前の笑顔
"無"の表情を知ってる俺からすれば、全部作られただけの嘘の仮面
いつも馬鹿みたいに笑顔を貼り付けてるモヤシが、時折見せるもんと同じだ
それが、俺は嫌いだった
『いのせんす? なんだぁそりゃ』
『なんでもいいんです。不可解な噂を耳にしたりだとか…』
『知らねぇよ、ンなもん。さっさとウチ帰っておねんねしな! 此処は餓鬼の来る所じゃねぇよ!』
『…お気を悪くしてすみません』
カジノと呼ばれる、ギャンブルが行われる公共の遊び場
言われた通りにその馬鹿でかいホールの隅で、情報収集をする雪を傍観する
あちこち見渡せど金をばら撒く大人達は、目の前の賭け事にしか意識が向いていない
一人一人聞いて回ったって、ガキの戯言だと邪険にされる始末
それでも嘘の笑顔を貼り付けてヘコヘコ頭を下げる雪は、胸糞悪いもんにしか見えなかった