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My important place【D.Gray-man】

第43章 羊の詩(うた).



 コムイ室長。
 私の未来を守りたいと言ってくれた、その姿を思い出してボタンを留めていた手が止まった。

 …あの言葉にきっと偽りはなかった。
 教団の実験に巻き込まれた私への償いなのか、室長自身もわからないと言ってた。
 あの室長らしくないぎこちない返答は、きっと彼の"素"の顔だ。

 …酷いことを、言ってしまったと思う。

 適性実験の責任は負うと言っていたけど、それでもコムイ室長は実験とは無関係な人。
 寧ろ室長のお陰であの実験は止めることができた。
 そんな室長に私は、家族を返せと喚き立て、無責任な愛を向けるなと罵った。

 無責任な言葉を浴びせたのは私の方だ。

 無責任な愛なんかじゃない。
 それだけ室長は真剣に、私や他平団員達の命も重く受け止めてくれているんだ。
 エクソシストだけじゃなく、本気で私達も守りたいと思ってくれている。

 狭い視野でしか大事なものを囲うことができない、私とは違う。
 もっとずっと大きく広い視野で物事を見つめ、大事なものを守ろうとしてくれている。
 私よりずっとずっと大人で立派な考えを持った人だ。
 到底真似できない程。

 そう思うと、罪悪感が湧いた。
 そんな室長の思いを蹴って、否定して、応えられなかったことに。

 …ちゃんと伝えよう。
 室長に、ノアのことを全部伝えなきゃ。

 改めて意を決する。
 しっかりとボタンを留めきって顔を上げた。

 ユウが此処へ来たことがもうバレてしまっていたらまずい。
 きちんと私の意志を伝えて、教団に敵意なんてないことを伝えないと。
 そうすればユウが敵視されるなんて最悪な状況は免れる。


「……」


 …ユウ…なんで黙って出ていったのかな…。

 ユウのことを思えば思う程、体が少し寒くなる。
 やっぱり急な呼び出しなんかがあったのかもしれない。
 ……やっぱり、バレてる可能性は高い。

 肌寒さに両腕を抱いて肌を擦り合わせる。
 そんな寒さを紛らわすように、机の上へと目を向けた。
 ユウの数珠。
 今は、身に付けられるかな…。


「…あれ…?」


 寒さを紛らわす為に、手を伸ばした数珠。
 だけど料理のトレイの横に置いていたはずの数珠は、ユウと同じに姿を消していた。

 え、なんで。

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