My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「な…ない…っ」
慌てて机周りを探す。
暗くて見え難い視界に、急いで蝋燭に火を灯して燭台片手に探し回った。
机も床も椅子やベッドの下も。
「なんで…」
なのに何処にも見当たらない。
ロードのリボンは机に置かれたままだった。
なんで数珠だけ消えたのか。
思い当たる予想は一つだけ。
「……なんで」
ユウが持っていったんだ。
…じゃなきゃ数珠だけ急に消えるなんてあり得ない。
でも、なんで?
「……」
数珠は私に預けたんだから好きにしろ、とまるで贈呈したかのような言葉をユウはくれた。
今更返せなんてなんて言わないって、そう。
なのに持っていった意思はなんなのか。
…考えたくない。
どんなに考えても、嫌な方にしか向かわない。
じとりと、握りしめた手に嫌な汗を掻く。
暑さなんて感じない檻の中で、ひんやりと冷たい汗。
ガチャン、
「──!」
その思考を遮ったのは、重い錠が開く音。
何度も聞いた、訪問者の音。
弾けるように顔を上げれば、重い鉄の扉がゆっくりと開くのが目に映った。
差し込む地下通路からの光。
其処に立っていたのは──