My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「ったく…さっきまでガキみたいに散々泣いてた奴とは思えねぇな」
「あれは…だから、いつもあんな泣き方しないってば」
偶々だから。
色々なものがこみ上げて堰を切って溢れただけだから。
「じゃあどんな泣き方するんだよ」
「どんなって…」
「お前、いつも堪えて我慢するだろ。まともに泣かねぇから、普段の泣き方なんて俺は知らない」
そういえば…あんまり、泣いたことはない、かも。
職業柄、女だからって泣く姿なんて弱いところ、他人に見せたくなかったから。
涙を零すのは、誰も見ていない時が多かった気がする。
「無理に泣けとは言わない。でもその涙は俺に拭かせろよ」
伸びたユウの手が頬に触れる。
親指で優しく涙袋をなぞられて、胸がきゅっと締め付けられた。
「…うん」
少し冷たい、心地良い手に頬を擦り寄せる。
目を閉じて、その感触に浸った。
気持ち良いな…。
「目、更に腫れたな」
「…別の意味で泣きましたから」
そんな私の顔をまじまじと見てそんなことを言うもんだから、つい真顔で返してしまった。
ええ、散々啼かされましたから。
散々責められて。
「あんなに我慢して耐えなくてもよかったのに…一回しか駄目なんて、私言わないから」
私をもっと感じていたいから、イクのを我慢してたっていうのは、正直嬉しいけど…でもどうせなら…一緒にイキたかったかな、なんて…。
ちょっぴり残念だなぁと思う。
ちょっぴりね、ちょっぴり。
「何言ってんだ、出せねぇだろ」
なのにユウの反応は何言ってんだって、呆れ顔。
なんで。
「ゴム付けてねぇのに」
「……」
………あー……成程…。
ああ、はいはい…そういうことね。
うん、わかった。
ひたすら私の中で耐えていたのも、奉仕するという私の案に乗ったのも、全て辻褄が合って納得した。
だから我慢してたんだ。