My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「吐き出せ、全部」
「んぐっ…ちょ、待っ」
「いいから出せってんだよ。お前今満足に飯も食えねぇ体だろっ」
問題そこ?
私の口に指を突っ込んで、前みたいに出したものを掻き出そうとしてくる。
でも以前とは違って、指で掻き回しても思ったより掻き出せなかったんだろう。ユウの顔がぎょっとしたものに変わった。
「おま……飲んだのか。今の」
「う、ん…」
「全部?」
「…吐かない、程度に、は」
「何やってんだお前…っ」
いや、それ私の台詞。
人の顔掴んで喉奥に欲望放ったのはどこの誰ですか。
飲むなって方が無理な話だから。
「だってユウが無理矢理──…」
「?」
反論しようと声を上げようとして、不意につっかえてしまう。
喋ればわかる、喉奥に感じる不快感。
怪訝に見てくるユウを前に、思わずぱしりと口元を両手で覆った。
「ぅ…」
「どうした」
「…………吐きそう」
「なッ」
時間差でやってきた嘔吐感。
堪らずうぷりと頬を膨らませれば、ユウは更にぎょっと焦った表情を見せた。
「ま、待て。吐くなよ。なんか器持ってくるから待ってろ!」
ばたばたと慌てながら机の食器やら水差しやらに手を伸ばす。
甘い雰囲気なんてどこへやら。
それでいて珍しいユウのそんな姿に、嘔吐感はまだあったけど…くすりと。少し、笑ってしまった。