My important place【D.Gray-man】
第13章 夢現Ⅰ,
「か、神田っ!? 何やって…!」
「見てわかんねぇのか。拘束してんだよ」
焦るバク支部長に、神田が当たり前のように応える。
いやわかりますけど!
それをする意味がわかりません!
「ワクチン作れるんだろ。何処でならできる」
「え? いや、しかし感染源の血が──」
「クロウリーの血ならここにある」
懐から徐に取り出した何かを、神田が支部長に放る。
慌てて支部長が受け取ったそれは小さな小瓶。
中には赤い血の液体。
それってまさか。
「ほ、本当にクロウリーのものなのか…!?」
「んな確認は後でやれ。それより此処から逃げんのが先だ」
神田が睨む先には、床に伏せていた体を起こすアレン。
だけど手は休むことなく、早々と私の手と足をそれぞれ一つに固定するように縛り上げて…うわ。
本当に拘束されてしまった。
「ワクチンができれば、こいつも治せんだろ」
「っそうか…!」
「ん、んんぅ…!」
「煩ぇ、大人しくしてろ。気絶させんぞ」
軽々と、まるで荷物のように神田が私の体をうつ伏せの状態で肩に担ぎ上げる。
口を塞がれてるから止めようにも何も言葉にできなくて、必死で唯一自由な首を横に振る。
これじゃ完全にお荷物だ。
足手纏いは嫌なのに。
「テメェが言ったんだろ。二人で助かる道を探そうって」
ちらりと見上げてくる黒い眼。
言われた言葉は、確かに私が口にしたものだったけど。
それは感染してなかったらの話で──
「それにモヤシのゴーレムにやられたってのが気に入らねぇ」
って、そっちが本音なんじゃないの!?
どんだけ仲悪いのほんと…!
というかティムはクロス元帥のゴーレムであって、アレンのじゃないから!
「二人共こっち! ゾンビ見当たりませんから!」
「う、うむ!」
「っ!?」
蝋花さんに応えるバク支部長の声が聞こえた途端、体が動き出すその動作に大きく揺れた。
手足を固定されてるからしがみ付くこともできず、見えたのは視界の横で靡く神田の長い黒髪と赤い髪紐。
そして遠ざかるゾンビ化したアレンの姿。