My important place【D.Gray-man】
第13章 夢現Ⅰ,
「そうだっ神田、バク支部長がワクチン作れるんだって」
はっと思い出して、今一番重要なことを伝える。
「ワクチンを?」
「これなら、ただ逃げ出すだけじゃなく問題を解決できるかも…」
神田の眉間の皺が消える。
あまりにも絶望的な状況だったから、その希望は私達には大きな光だった。
あとは──
パタタ…
不意に聞こえた、小さな羽音。
それは人通りのない、廊下の奥底から。
「…?」
私の背中の服を離して、神田が訝しげに目を向ける。
その暗い廊下の奥から見えたのは…金色のゴーレム。
「…ティムキャンピー?」
あれは確か、クロス元帥のゴーレムじゃ…
コツ、
足音。
コツ、
ブーツか何かの。
コツ、
誰かが近付いてくる。
「ひっゾンビか…!?」
「支部長、また蕁麻疹が…っ!」
「……」
慌てる支部長と蝋花さんを余所に、廊下の先を神田が睨む。
パタパタとその場に舞うティムキャンピー。
もしもこの足音がその持ち主なら…まずい。
相手はあの元帥。
イノセンスも何もない神田じゃ、やられてしまう。
コツ、
ブーツの先が暗がりから見える。
真っ黒に塗り潰されたブーツに、細身の足。
その体に纏っているのは、真っ白な──
「…ウォーカーさん…?」
蝋花さんの声が静かに響く。
其処に立っていたのは、白髪のエクソシスト。
アレンだった。