My important place【D.Gray-man】
第13章 夢現Ⅰ,
「できたらいいな、くらいで。駄目なら駄目で別の方法を…」
「なんだ、そんなことか」
え?
必死に蝋花さんを励ましていると、思わぬ言葉が乱入した。
目を向ければ、其処にはやれやれと肩を竦めるバク支部長。
「ワクチンなら僕が作れる。アジア支部一の頭脳の持ち主だぞ」
偉そうに胸を張る支部長のその態度は相変わらずの俺様だったけど、今の私達には正に天の助けだった。
それ本当ですか…!
「本当ですか…ッ」
「っああ」
思わず支部長に前のめりに問いかける。
「流石支部長ッ」
「私もっ見直しましたっ」
「見直したとはなんだ、蝋花…って。月城、か、顔が近い…ッ」
思わず興奮して、喰い付いてしまっていたらしく。近くにある支部長の顔に、ぷつぷつと赤い点々が…あ。
「大変、蕁麻疹出てますよっ」
「ぅ…いや、これは…っ」
「症状を抑える薬とかは? こんな所で発症したら…ッ」
「月城が退いてくれれば助かるんだが…っ」
慌ててその様子を伺えば、益々顔の赤みが増す。
バク支部長の蕁麻疹は、極度の緊張で出るって前にウォンさんから聞いたことがある。
緊張を促すようなこと、何かして──
「ッわ…っ」
急に背中の服を掴まれて、後ろにぐいっと引っ張られる。
「何後ろでごちゃごちゃやってんだよ。うぜぇな」
支部長から引き剥がすように引っ張ったその腕の持ち主が、真後ろから低い声を発する。
振り返り見えたのは、眉間に皺寄せた神田。
「神田、バク支部長の体に蕁麻疹が──」
「いや、大丈夫だ。大丈夫だから、気にするな」
慌てて事を伝えようとすれば、それを止めたのは支部長自身だった。
見れば既にその兆候は治まりつつある。
早っ
「もう、支部長。面倒な症状、此処で出さないで下さい」
「面倒って…時々毒舌だな…君、」
もうっと咎める蝋花さんの様子を見る限り、多分それは日常茶飯事らしい。
あんな簡単に蕁麻疹出たり引っ込んだりしてたら、大変そうだなぁ…。