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My important place【D.Gray-man】

第13章 夢現Ⅰ.



「行くぞ、ついて来い」

「ぅぅ…にしても、見た目とあの動きはなんだ…コムイめ、面倒な薬なんぞ作りおって…」

「私、あんなゾンビみたいになりたくないですぅ…っ」

「…えっと」


 薄暗い朝の廊下を、神田を先頭に進む。
 前を見れば神田の背中。
 ぶつぶつと文句を言いながら、顔を顰めたバク支部長が左。
 辺りを恐々と見渡しながら、顔を青ざめた蝋花さんが右。
 左右、二人の手はしっかりと私の腕や肩を掴んでいる状態。

 …極度の怖がりなんですね、二人共。

 その気持ちはわかります。
 わかりますけど…そんなに強く掴まないで下さい。


「あんまり引っ張ると、服伸びちゃいますから」

「…そういえば、月城」

「はい?」

「君、その顔と手はどうした。結構な怪我みたいだが…ゾンビの誰かにやられたのか?」

「ああ…はい、まぁ…」


 しげしげと手当てされた顔と手を見てくるバク支部長に、思わず苦笑する。

 これ、神田にやられたんです。
 とか言えないし。

 これ、幽霊にやられたんです。
 とか益々言えないし。


「よく感染せずに済んだな」

「幸運だったみたいで」


 感心するバク支部長に、適当に言葉を返す。
 咎落ちのあの子の話なんてしたら、絶対二人は怖がるだろうから。
 またこんな所で騒がれたら困る。


「それより…あの、一つ確認していいですか?」

「うん? なんだ」

「その白衣姿…蝋花さんって科学班なんですよね?」

「あ、はいっそうです」


 コクコク頷く蝋花さんに希望が湧く。
 やった、それなら。


「なら、ワクチン作れたりできますか? コムビタンDの」


 多分この教団で、ワクチンを作れる科学班の皆は全滅してしまった。
 もうワクチン作りは不可能かと思ったけど、蝋花さんがいれば──


「ご、ごめんなさい。私まだ科学班見習いで…新薬の開発とか、関わったことなくて…」


 思わず浮かんだ笑みは、その言葉で止まってしまった。


「すみません…役立たずで…」

「そ…っんなことないです、ごめんなさい、凹まないでっ」


 しゅん、と見るからに落ち込む蝋花さんに、慌てて首を横に振る。
 しまった、落ち込ませてしまった。

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