My important place【D.Gray-man】
第13章 夢現Ⅰ
「それより、あの。一つ確認してもいいですか?」
「うん? なんだ」
「その白衣姿…蝋花さんは科学班なんですよね?」
「あ、はいっそうです」
こくこくと頷く蝋花さんに希望が湧く。
やった、それなら。
「なら、ワクチンを作ることできますか? コムビタンDの」
多分この教団で、ワクチンを作れる科学班の皆は全滅してしまった。
もうワクチン作りは不可能かと思ったけど、蝋花さんがいれば道が拓ける。
「ご、ごめんなさい。私まだ科学班見習いで…新薬の開発とか、関わったことなくて…」
そう希望で浮かんだ笑顔は、その言葉に止まってしまった。
「すみません…役立たずで…」
「そ…っんなことないです、ごめんなさい、凹まないでっ」
見るからに落ち込む蝋花さんに、慌てて首を横に振る。
しまった、落ち込ませてしまった。
「できたらいいな、くらいで。駄目なら駄目で別の方法を…」
「なんだ、そんなことか」
「え?」
必死に蝋花さんを励ましていると、思わぬ声が乱入した。
目を向ければ、其処にはやれやれと肩を竦めるバク支部長が。
「ワクチンなら僕が作れる。アジア支部一の頭脳の持ち主だぞ」
偉そうに胸を張る支部長の態度は相変わらずの俺様だったけど、今の私には天の助けのようだった。
それ本当ですか…!
「本当ですかッ」
「っああ」
思わず支部長に前のめりに問いかける。
「流石支部長…ッ」
「私もっ見直しましたっ」
「見直したとはなんだ蝋花…って、月城、か、顔が近い…ッ」
思わず興奮して喰い付けば、近くにある支部長の顔にぷつぷつと赤い点々が…あ。
「大変、蕁麻疹出てますよっ」
「ぅ…いや、これは…っ」
「症状を抑える薬とかは? こんな所で発症したら…ッ」
「月城が退いてくれれば助かるんだが…っ」
慌てて様子を伺えば、益々顔の赤みが増す。
バク支部長の蕁麻疹は、極度の緊張で出てしまうって前に、アジア支部長補佐のウォンさんから聞いたことがある。
緊張を促すようなこと、私別に何もしてないけど。
「医務室に戻れば薬があるか、もっ?」
途端に背中の服を掴まれて、強制的に後ろに引っ張られた。