My important place【D.Gray-man】
第13章 夢現Ⅰ
「助ける、か…そうだな…!」
「わ、私も…っウォーカーさんの為に、できること、したいです…ッ」
神田の励ましは思わぬ効果を発揮したみたいで、涙を拭って二人が立ち上がる。
その顔には強い決意が表れていた。
うん。
人を想う気持ちは、何よりも原動力になるから。
「よし君達! この僕についてゴふッ!」
「ギャーギャー騒ぐなつってんだろ」
それも束の間。
高らかに声を上げるバク支部長に、神田の拳が唸るのは数秒もかからなかった。
…うん。
やっぱり短気な性格は早々変わらないらしい。
「行くぞ、ついて来い」
「ぅぅ…にしても、見た目とあの動きはなんだ…コムイめ、面倒な薬なんぞ作りおって…」
「私、あんなゾンビみたいになりたくないですぅ…っ」
「…えっと」
薄暗い朝の廊下を、神田を先頭に進む。
前を見れば神田の背中。
ぶつぶつと文句を言いながら、顔を顰めたバク支部長が左。
辺りを恐々と見渡しながら、顔を青ざめた蝋花さんが右。
左右、二人の手はしっかりと私の腕や肩を掴んでいる状態。
…極度の怖がりなんですね、二人共。
その気持ちはわかります。
わかりますけど、そんなに強く掴まないで下さい。
あんまり引っ張ると、服伸びちゃいますから。
「そういえば、月城」
「はい?」
「君、その顔と手はどうした。結構な怪我みたいだが…ゾンビの誰かにやられたのか?」
「ああ…はい、まぁ…」
しげしげと手当てされた顔と手を見てくるバク支部長に、思わず苦笑する。
これ、神田にやられたんです。
とか言えないし。
これ、幽霊にやられたんです。
とか益々言えないし。
「よく感染せずに済んだな」
「幸運だったみたいで」
感心するバク支部長に、当たり障りなく返す。
咎落ちのあの子の話なんてしたら、絶対二人は怖がるだろうから。
またこんな所で騒がれたら困る。