My important place【D.Gray-man】
第13章 夢現Ⅰ,
✣
「ううぅ…そんな…リナリーさん…」
「ウォーカーさんがぁぁ~…ひっく…」
「「……」」
滝のように涙を流し、項垂れ悲しみに暮れる二人。
バク支部長と、確か…アジア支部科学班配属の…蝋花(ろうふぁ)さん、だっけ。
そんな二人を前に、私と神田は棒立ち状態。
どう声をかけていいやら…二人の想い人だもんね。
そうだよね、そんな人がゾンビなんかになってたら、ショックだよね…。
「テメェら、そんなことで──」
「わわッ」
だけど神田はそんな同情することもなく、冷たい顔で吐こうとした言葉に、咄嗟に両手でその口を押さえて止める。
絶対、非道なこと言おうとしたでしょ…!
今言ったら、再起不能になるから二人共!
「……」
「…よ、弱ってる人には優しくしましょう…」
口を塞がれたまま、睨んでくる神田の目が怖い。
でも流石にそんな暴言吐かせられないから、なんとかそう忠告する。
包帯巻いた手が、ちょっとだけ痛い。
そういえば前にもこんなこと言ったっけ。
確かあれは、AKUMA討伐で墓地に向かった馬車の中で──
「うぜぇ」
「わっ」
不意に手首を掴まれて、押さえていた手を離される。
「おいテメェら、さっさと立て。さっきの騒ぎでゾンビが来るかもしれねぇだろ。場所変えるぞ」
「ちょ…っ待っ」
「悲しむ暇があれば、助ける方法考えろよ。そいつらを想う気持ちがあるんなら」
…おお。
あの神田が、罵倒じゃなく励ましてる。
珍しい…。
思わずまじまじ見上げれば、これでいいだろと言わんばかりの目が向いて、呆気なく掴まれていた手首を離された。
…忠告、聞いてくれたのかな。
「助ける、か…そうだな…!」
「わ、私も…っウォーカーさんの為に、できること、したいです…ッ」
神田の励ましは思わぬ効果を発揮したらしい。
涙を拭って立ち上がる二人。
その顔には強い決意が表れていた。
うん。
人を想う気持ちは、何よりも原動力になる。
「よし君達! この僕についてゴふッ!」
「ギャーギャー騒ぐなつってんだろ」
それも束の間。高らかに声を上げるバク支部長に、神田の拳が唸るのは数秒もかからなかった。
…うん。
やっぱり早々、その短気な性格は変わらないらしい。