My important place【D.Gray-man】
第2章 空白の居場所
…そう思ってたんだけど。
「…やっぱり一緒に行動すればよかったかも」
物音一つしない静かな墓場。
墓標の十字架から伸びる黒い影だけが、鬱蒼と足元を暗く忍ばせていた。
こういうのホラー映画とかでよくあるよね…足元から急に死体の手が出てきて、足首を掴む的な……。
「ないない、映画の見過ぎだから」
即座に首を横に振る。
墓地の雰囲気に怖がってるとか。
それこそ神田に呆れた顔されるだけだから。
「…ここにも血痕」
それからざっと墓地を調べて回った。
すると一見何もないように見えて、よくよく調べると、あちらこちらから血痕らしき跡が発見できた。
恐らく此処で殺された人達のものなんだろう。
遅かれ早かれ、きっとAKUMAと遭遇する。
これは早めに神田の元に戻ってた方が──
「っ!?」
そう結論付けると同時に、ファインダーのマントをぐいっと引っ張られた。
驚き振り返る。
AKUMAっ!?
「へ?」
だけど其処には誰もいない。
…視線が下がる。
「犬?」
下げた視線の先には私のマントを咥えて引っ張る、一匹のわんこがいた。
「ワンッ」
まじまじと見れば、マントから口を離してぱさぱさと尾を振ってひと鳴き。
随分、人懐っこいみたい。
「こんな所でどうしたの。よしよし」
屈んで頭を撫でても、逃げる様子はなかった。
誰かに飼われていたのか、人に慣れているのか。
どちらにしろ、こんな場所にいるのは危険だ。
「おいで。餌はないんだけどね」
腰を上げて歩き出せば、軽い足取りでついて来る。可愛いなぁ。
神田はこういう生き物苦手そうだけど。
「噛み付かなければ、あの暴君も怒らないでしょ」
廃れた墓標の合間を縫って、わんこに向かって笑いかける。
やがて真っ黒な団服に包まれた、高い背中を見つけた。
「いた。神──……何それ」
「俺が知るか」
何故かその足元に、大小のわんこを沢山引き連れて。
…何があったんですか。