My important place【D.Gray-man】
第2章 空白の居場所
駄目だ…頭痛の所為かな。
暗く沈む思考を、無理矢理切り替えるようにして顔を上げる。
「大丈夫。自分の始末は、自分でするから」
真っ直ぐにその黒い眼を見返す。
サポートしかできない自分だから、せめて足手纏いにはなりたくない。
この世は平等だなんだと口にしても、所詮根本は弱肉強食。
特に私達が生きてる、聖戦を交えるこの世界では。
強くないと生きられない世界。
そんな世で、自分は弱いからと悲観して生きるのは嫌いだ。
「…そうかよ」
先に視線を外したのは神田だった。
そのまま私も窓の外に目を向ける。
ガタガタと揺れる馬車の中。
窓の外に見えたのは、殺風景に続く乾いた道だけだった。
「…うわ」
ザリ、と乾いた地面を踏みつける足音。
目の前に広がるのは、不気味に立ち並ぶ墓標達。
「駄賃は要らないんで…ッ」
「あっ」
目的地の場所に運んでもらって、御代を払おうとすればそれより早く、馬車は逃げるように行ってしまった。
怖がってた場所だもんね、仕方ない。
「はぁ…にしても…」
再び辺りを見渡す。
十字架の墓標はでこぼこと不規則に地面から生えていて、そんな墓標を取り囲う周りの木々はどれも枯れていて真っ黒。
物悲しげなその墓地は、一目見てわかる程に廃(すた)れていた。
「…なんか如何(いか)にもな雰囲気」
今にも幽霊とか出てきそうな。
まだ夜じゃないけど、もう夕日は落ちてきている。
地面に伸びる影を足元に立つ、神田の背中を見る。
その横顔は墓場の真ん中にいようとも、怯える様子なんてなく顔色一つ変わっていなかった。
アレンやラビに比べて、そこら辺男前だよね…というかあの二人が怖がり過ぎなのかもしれないけど。
「神田、AKUMAの気配は?」
「ない」
辺りに鋭い視線を送ったまま、手短に返される言葉。
どうやらAKUMAは近くにはいないらしい。
「でも目撃情報は全部ここからだから、何か手掛かりがあるかも。私、あっち探索してくるから。神田は此処辺り一帯、お願い」
さくさくと指示を出して別行動をする。
単独行動は危険も伴うけど、二人しかいないから。
手間暇を考えるとそっちの方が都合がいい。