My important place【D.Gray-man】
第12章 黒の教団壊滅事件Ⅴ
アレンが黒の教団に入団して間もない頃、食堂でファインダーのバズに吐き捨てていた神田の言葉を思い出す。
『サポートしかできねぇんだろ。お前らはイノセンスに選ばれなかった、ハズレ者だ』
あの言葉はファインダー皆の怒りを買ったけど、私はどうとも思わなかった。
私が選んだのは、エクソシストじゃなく普通の人間。自分でその"ハズレ者"を望んだ。
不適合者の烙印を押されて悲しんだのは、唯一父が残してくれたものを自分の手で壊してしまったからだ。
「関係ねぇだろ。親がエクソシストだなんだ」
不意に続けられた神田の言葉は、予想していなかったものだった。
「俺はお前の親なんて知らねぇし、亡くなった者を今更知る気もない」
思わず思考が止まって、慌てて目を向ける。
「俺が知っているのは、月城雪って名の人間だけだ」
見えたのは、こちらを見ずに言葉を紡ぐ神田の横顔。
「それ以外を見るつもりはねぇよ」
ちらりと、言葉の最後に黒い眼差しが向く。
心の奥底まで見透かしてしまいそうな、鋭い眼孔を持った神田の目。
真っ黒なその瞳は、何を考えてるのかわからないことが多かった。
なのに。
「…っ」
その目はまるで、私を認めてくれているように見えた。
オブラートに言葉を包まない神田は、いつも思ったことを赤裸々に口にする。
周りの言葉や私の過去に左右されない神田のその心は、世間体や肩書きなんて関係なく、真っ直ぐに私だけを見ていてくれてる気がした。
「…ありがとう」
俯いて、神田から視線を外す。
「別に」
聞こえた声は、いつもと変わらない素っ気無いものだったけど。
手を伸ばせば触れられる距離にある、神田の体。
前はそこに、目に見えない遠い距離を感じたのに。
なんだか今なら、近くに感じられる気がした。