My important place【D.Gray-man】
第12章 黒の教団壊滅事件Ⅴ
私の母はサポーターとして教団に配属していた。
そのことを知っている人は多い。
というかそれを理由に、私は黒の教団に入団させてもらえたから。
計らいは、あの暗い地下の部屋で出会った赤髪の元帥。
クロス・マリアン。
でも私の父がエクソシストだということを知っているのは、極少数の人だけ。
神田も勿論知らないだろうけど…多分それは知らされてないからじゃなくて、ただ単に周りに興味がないからだと思う。
私のことも。
「……」
そっと神田の横顔を見る。
目を瞑って待機する姿は、何を考えているのかわからない。
きっと聞いてこないのは興味がないからなんだろう。
私も無闇に誰にも話すつもりはないから、その方が楽だった。
…今までは。
『俺は嫌いだ』
あの墓地の任務ではっきりと、拒絶された時と同じ。
私に無関心な神田は当たり前のものだったのに、何故か胸の奥が少しだけ、つきんとする。
「…なんだよ」
「え?」
考え事をしながらじーっと見てしまっていた。
視線を感じたんだろう、片目を開けた神田と目が合う。
「じろじろ見んな、視線がうぜぇ」
「あ、うん」
慌てて視線を両手に戻す。
いつもの神田なら、そこで口を閉ざすけど。
「チッ」
鬱陶しそうに舌打ちが聞こえて、痛い程の視線を感じた。
「何かあるなら言え」
「え…ええ、と…」
まさか促されるとは思ってなかったから、焦る。
他愛ない雑談でもよかったんだけど。
神田と晩餐の話をするの、割と面白かったし。
でもこの雰囲気でそんな話したら、多分殴られる気がする。
何度も神田に頭を叩かれてきた、勘みたいなものです。
「…あの、さ」
無闇に吐き出せないことだけど、このまま中途半端に知られて黙っているのは、なんだかもやもやして。
気付けば口が開いていた。
「私の父親って、エクソシストだったの。もう、わかってると思うけど」
視線を両手に向けたまま、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
あんなに言うのを心は躊躇ったのに。口にすると、それは自然と言葉になって流れ出た。