My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「痛…っ」
「大丈夫?」
「ああ、うん。ちょっとこのベッド硬くて──…?」
雪の顔の横につく褐色の手。
ギシ、と微かにベッドが軋む。
勢い余って打った頭を押さえながら、恐る恐る顔を上げた雪の目の前にはティキの顔。
吐息さえも届きそうな距離の近さに、思わず体は固まった。
「あ、の…?」
「ん?」
「近い、んです、けど…」
「頭の怪我でも見てやろうかと思って」
「ぃっ要らない! 怪我なんてしてないから…ッ」
「そ? じゃあこっちの消毒だけでいいか」
「!?(まだやる気!?)」
再び枷に触れる手に、雪はぎょっとしてティキの胸を押し返した。
「ちょ…ッ笑えない冗談はやめてってば…!」
「じゃあ冗談じゃなけりゃいい?」
「え…っ」
「俺別に、からかいたくてこんなことやってる訳じゃねぇし」
半ば上から覆い被さるような体勢のまま、ティキの手がつつ、と雪の股を囚人服の上から這う。
予想していなかった行為に雪が体を硬直させれば、そのまま足元へと下った褐色の手は下から救うように踝(くるぶし)を持ち上げた。
「ちょ、ちょっと待ってティキ…ッ」
持ち上げられる足首に、なんとか上半身を起こして手を伸ばそうにも、届かない。
そんな雪の踝を持ち上げた手が、薄い唇へと誘う。
足首に擦れてできた皸を、手首のそれと同じように舌で拭われるのかと思うと、雪の顔に熱が集中した。
手首だけでも恥ずかしいものを、足首なんて舐められようものなら堪らない。
「待ってって…ッ」
「嫌? それとも恥ずかしい?」
「恥ずかしいでしょそんなのッ」
「じゃあやめない」
「はっ!?」
嫌だと拒否する感情がないのならやめる気はないと、ティキは構わず足首の赤く擦れた皸に、唇で触れた。