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My important place【D.Gray-man】

第43章 羊の詩(うた).



 どんなに思いや考えを伝えても、大事な話をしても。目覚める度にノアである家族のことを忘れていた雪だったが、その記憶はしっかりと根付き始めている。
 だから当たり前にティキを受け入れて、その名を呼び、向き合えているのだ。
 覚醒はしていなくとも確実にノアとしての片鱗を見せている。

 これが笑わずにいられようか。



「…何睨んでるのにニヤニヤしてんの…ティキってM?」

「まっさか。俺、弄られるより弄り倒したいタイプだから」

「ああ…なんかそんな感じする」



 にっこり笑って返せば、冷たかった雪の目が呆れたものへと変わる。
 相手にするのも疲れたと言わんばかりに、ベッドの上で座り込んだまま、石造りの壁に背中を預けた。



「よく出てくるよね、夢の中。私別に弄り甲斐あるタイプじゃないと思うけど」

「そ? 俺的には雪は面白いところ色々あると思うけど。さっきの子守唄リサイタルとか──」

「その話はやめて下さい!」



 例に挙げれば全てを言い切る前に、真っ赤な顔の雪に止められる。
 そんなところが面白いのだと、彼女は気付いていないのだろうか。
 ティキはくつくつとおかしそうに笑った。



「ま、それは冗談としても。こんな暗い牢の中に一人でいたら怖いんじゃねーかと思って。添い寝くらいしてやるよ。ホラオイデー」

「私は夜泣きする子供か。んなもん要りませんって棒読みだから! 最後が! 凄く!」



 緩く両腕を広げて催促するティキに、即座に渾身の突っ込みと否定が入る。
 それも冗談の延長だと罵る雪に、ティキはやれやれと肩を竦めた。



「んだよ、可愛くねぇの」

「可愛くなくて結構です」



 つんと素っ気無く顔を背ける雪に、苦笑一つ。
 デレてはくれなかったが、普段の反応へと戻った雪にとりあえず良しとするかと。

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