My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「……」
狭いベッドの上で膝を抱いて縮こまる。
そうして布団に包まれじっとしていれば、寒い地下の牢獄の中でも多少は温かく感じられることを雪は知っていた。
(……あったか…く、ない)
けれど何故か体は冷える。
ひゅうひゅうと隙間風に当たっているような寒さを感じて、ぶるりと震える体にぎゅっと更に体を縮めた。
それでも一向に温かくはならない。
パリ中央警察著の独房の中はもっと寒かったはず。
それでも温かくなれていたのに。
ジジやバズ達の隙間にぎゅうぎゅうと挟まれたり、神田の団服を借りてすっぽり包まるだけでぽかぽかと温まっていた。
(…あ、そっか…)
何故あそこよりも温かいはずのこの地下の牢獄で、酷く寒さを感じるのか。
深く考えずとも、すぐに理由は思い当たった。
あの独房と此処で違うことは一つだけ。
誰もいない。
(私、ひとり)
同じに捕えられ仲間と呼べる者も、牢獄から救出しようと手を差し伸べてくれる者も、誰もいない。
「……」
分厚い鉄の扉が再び閉ざされると、外からの物音は一つだって聞こえない。
自ら音を発さなければ、何も聞こえない無音の世界。
まるで世界にひとり、取り残されたような気になる。
右も左も前も後ろも、何処にも道はない。
そんな錯覚。