My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
レニーの姿を見たバクの体から、力が抜ける。
「貴方がそのような反応を示すのであれば、やはり外部に漏らすのは"その時"まで待った方が良さそうですね。このことはここだけの話にさせて頂きたい。よろしいですかな? バク支部長」
「………ああ」
「…バクちゃん…」
「大丈夫だコムイ。…手を放せ」
静かに力のない声で促すバクに、先程の気性の激しさはない。
言われるがまま腕から手を放すコムイに、バクはその場から一歩も動こうとはしなかった。
「サード計画はレニー支部長が申した通り、教皇の御下命です。サードについては彼女の指揮に従って頂きたい」
「……わかりました」
「良かった」
静かに頷くコムイを目に、ルベリエがにっこりと穏やかに笑う。
「それともう一つ。月城雪の処置についてですが…それもまた私の監視の下により行うよう、教皇から御下命頂いています」
「っ…それは、」
「反論など無意味ですよ、室長」
雪の名前を耳にした途端、コムイの顔に険しさが増す。
先程まで従順に従っていた口が反論しようとすれば、その前にルベリエが遮った。
飲み干した紅茶のカップをコトリと置いて、両手を膝の上で組み合わせる。
細い切れ目を向けて微笑むルベリエから感じる"圧"に、反論の余地など許されてはいなかった。
「これは決定事項です。彼女の命は、私が預からせて頂きます」