My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「日も浅いうちに、色々と君を急かしてすまないとは思ってる。でも恐らく今日明日には君の下へ中央庁の者が着くだろう。ルベリエ長官が向かうと報告で聞いた」
ルベリエ長官。
その名に思わず体が固まる。
思い出したのは、あのクロス元帥が消えた部屋で、金縛りにあったように鋭い目で彼に捕えられたこと。
「彼は僕のように融通は利かない相手だ。そして彼が"こう"だと命じれば、僕は従う他ない。その前にはっきりさせておきたいんだよ。君が、僕らに敵意のないことを」
「敵意なんてありません…っ」
「なら態度で示して欲しい。僕らに君のノアの事情のことを、全て話して欲しいんだ」
「言います! だからお願い、ユウにも伝えさせて下さい…ッ」
コムイ室長が私の為に行動してくれてることは、わかる。
でも室長がリナリーの為に自分の人生を捨てたように、私にも譲れないものがあるの。
今までそんなもの持たずに、教団の為に働いてきた。
これだけでいいから、私の我儘を聞いて欲しい。
「他は言うことを聞きます! 文句なんて言わないから…ッこれだけでいいから、私の願いを聞いて下さいッ」
つい椅子から腰が浮く。
目の前の室長に縋る思いで必死に頭を下げた。
他は全部受け入れるから。
ずっと此処に入れられ続けても鎖に繋がれ続けても、文句なんて言わないから。
だからユウに会わせて。
……一度で…いい、から。
「雪くん…」
こんなに強い主張を室長に見せたことはなかった。
だからなのか、目の前の彼が息を呑むように沈黙を作る。
「………すまない」
だけどその声は、暗く重いままだった。