My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「君は教団の駒なんかじゃない。僕には大事な部下の一人だ。だから…話して欲しい。教えてくれないか。雪くんのこと」
「……」
ああ…この人の言葉は真っ直ぐだ。
真っ直ぐ過ぎて、胸に突き刺さる。
この感情はなんなんだろう。
よくわからない。
嬉しいのか、悲しいのか。
色んな感情が渦巻いて、苦しくなった。
なんで、ここなんだろう。
何年も教団で働いて、ほぼ毎日顔を合わせていたのに。
なんで、今更なんだろう。
この人の真っ直ぐな思いに気付けたのが。
こんな暗くて冷たい地下の独房の中で、だったなんて。
「……」
もっと早めに気付けていたら…こんな形でバレる前に、自分から吐き出せていたのかな。
ノアのこと。
そしたら…こんな独房で鎖に繋がれることもなかったのかな。
「…っ」
そんなこと、全部今更だけど。
「……雪くん」
俯いて返事のない私に、室長の優しい声が被さる。
「…君は……アレンくんのこと、知っていたのかな」
そして全く予想していなかった名を耳にした。
「……アレン…?」
つい顔が上がる。
なんで今ここでアレンの話になるの?
アレンのことを知っていたって、何?
意味がわからずその名を復唱すれば、じっと室長は私の困惑顔を見つめていた。
そしてやがて、ゆっくりと口を開いてそこから出てきた言葉は。
「彼が14番目のノアだってこと」
理解の追いつかないものだった。