• テキストサイズ

My important place【D.Gray-man】

第43章 羊の詩(うた).



 …同じだ。
 私もユウに同じ気持ちを抱いたことがある。

 ユウに自分自身のことを話して欲しいから。
 それなら私も閉ざしている自分自身を見せないとって、そう思った。

 貰いたいならあげなくちゃ。
 望むだけじゃ駄目だ。
 応えて欲しいなら、まず自分が応えないとって。
そう。


「だから僕の言葉も信じて欲しい。…僕はこの黒の教団の室長だ。此処に就任してから、あの実験は凍結させたけど…僕自身、教団が残した負の遺産の責任は負わなきゃいけないと思ってる」


 不意に静まるコムイ室長の声。
 そこから漏れた"実験"という言葉に言葉が詰まった。

 …そういえば一度も話したことがない。
 室長は私の過去を知っていただろうけど…一度だってそのことを聞いてきたことはなかったから。
 見て見ぬフリを、されてると思ってた。


「…言葉もないよ。僕らが君にしてきたことは…"すまなかった"なんて謝罪で済むことじゃない」

「……」


 …室長は、私に聞かなかったんじゃない。
 聞けなかったんだ。


「君の過去の傷は、僕がどう足掻いたって拭うことはできない。…だからせめて君の未来を守りたいんだ」

「………償い、ですか…?」

「償い…に、似てるかもしれないけれど…どうだろう。僕自身もよくわからないな」


 指先で頬を掻きながら、微かに苦笑する。
 室長らしくない曖昧でぎこちない返事。


「でもはっきりと言えるのは、僕が室長になったのはリナリーや神田くん達エクソシストを人柱としか見ない、教皇から彼らを守る為だけじゃない。…君もそうだよ。この教団で命を賭して働いてくれてる皆を、僕は守りたい」


 室長がリナリーの為に先の人生を捨てて、教団の"室長"という道を選んだ覚悟の大きさは、なんとなくわかる。
 それだけの覚悟を持ってる人だから、きっとその決意も本音なんだろう。

/ 2637ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp