My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「"室長"という立場で見ても、君を救うメリットはある。…君は先に言った通り、神田くんにとって大きな存在だ。彼はセカンドエクソシストという、教団では貴重な戦力。そんな彼の心を左右する人物を、みすみす失っていいとは僕は思わない」
真っ直ぐに私を見上げて告げるコムイ室長は、正に"室長"の顔をしていた。
私情あってのメリットじゃなく、"黒の教団"としてのメリットをきちんと見据えている。
「ま。それ以前に僕の部下だしねー。若い女の子の部下ってそういないからさ。すっごく貴重なんだよ。わかる?」
「…は?」
「周りが男ばっかりなんて嫌じゃないかー! やっぱり職場には若い女の子がいて欲しいよネ! ネ!」
それも束の間。急に声を荒げる室長は、一気にその場にあった真面目シリアスな空気を壊してしまった。
…この時々ぶち込んでくる空気破壊ってなんだろう。
常にシビアにできないのかな。
「あの…室ちょ」
「その意見には賛成さ。野郎だけじゃモチベーションての?上がんねぇよな」
「だろう!?」
「いや、ちょっと。何普通に応えてんの何真面目に考えてんの。ブックマン、さっきからこの兎さん横入りしてくるんだけど! 接触していいの!?」
「はぁ…阿呆弟子め…」
うんうんと室長と共に頷くラビに思わずブックマンを呼べば、小柄な老人は呆れ項垂れていた。
ラビ関係の苦労多そうだよね、ブックマン。
ってそんなこと言ってる場合じゃない。
「でも…室長っ」
「ん?」
「なんでそんな簡単に私を信用するんですかっ? もしかしたら敵として教団に潜入してただけかもしれないのに…っ」
「それは違うって言ったじゃないか。雪くん自身が」
「それは…っ」
そう、だけど。
「…なんで…信じられるんですか…っ?」
わからない。
そこまで私に信頼を寄せてくれる理由が見つからない。
長い間私がファインダーとして務めていたから?
…それさえも偽りの姿の可能性はあるのに。
「信じて欲しいから。僕のこと」
「…え?」
「それなら僕から信じないとね。そうだろう?」
「……」
咄嗟に何も返せなかった。
その思考には覚えがあったから。