My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「あの時はティエドール元帥の言葉は半ば信じられなかったけど…それが僕にも実感できたのはね、後になって見せてくれた雪くんの姿だったんだよ」
…私?
ユウが先だってコムイ室長は言ってた。
先があるなら後もあるはずとは思ってたけど…それが私だったんなんて。
私、何かしたっけ?
「ほら。僕に初めて意見してくれただろう? 第二使徒のこと。神田くんの体のことだから、神田くん自身から聞きたいって」
…そういえば。
あった、そんなこと。
もう結構前の出来事だけど。
だけどその出来事を口にする室長は、まるでついこの間のことのように話していた。
まるで目の前にその光景が浮かんでいるみたいに、笑って。
「そんな言葉、仕事より彼を優先しなきゃ出てこない。そして君はファインダーとしてとても優秀な人間だ。そんな君の口からそんな言葉が出てきたなんてね。寝耳に水だったよ」
そう笑った室長の顔は、あの時、あの司令室で見た笑顔と一緒だった。
私が意見してくれたことが嬉しいと言っていた、あの時の満面の笑みと。
あの時はその笑顔の意味がわからず、リーバーさんと一緒に首を傾げてたけど……今、わかった。
室長も同じだったんだ。
ティエドール元帥が素敵なものを見つけたと言っていた時と同じ。
おんなじ、心境だったんだ。
…きっと。
「その時思ったんだ。ああ、僕の勘は間違ってなかったんだって。でもきっかけを作ったのは僕じゃない。神田くんが先で、それに雪くんが応えた。ただそれだけだったんだよ。君達の関係を築いたのは君達自身だ」
「……」
上手く言葉が出てこなかった。
優しい目で見てくる室長は、いつもの室長と何も変わりなくて。だからなのか、その言葉も何も偽りないように聞こえて。
なんだか、堪らなく胸が切なくなった。
切なくて、でも、嬉しくて。
…嬉しいんだ。
嬉しいって思ってる。
私達の関係が作られたものじゃないと、そう言われただけで。こんなに嬉しさを感じてる。
私こんなに…ユウのこと、好きだったんだ。