My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
『もういいよ! 好きにしたら! 神田なんて砂漠で干からびてミイラになればいいんだ…! 美形なんて滅んでしまえ!』
『なんだその個人的な文句! 美形言うんじゃねぇ殴るぞ!』
『ぁだッ!ってもう殴ってるから…!』
怖い顔をするユウから逃げるように後退れば、忽ち襟首を掴まれて阻止される
そして頭に重い拳骨が勢いよく落ちてくる
出会った当初からそうだった
暴力を振るう時は、ほんと躊躇がない
これでも一応、私女なんだけど
遠慮なく拳握って殴ってくるんだから
凄く痛い
確かこれ、ユウとバディのように組まされるようになって数ヶ月程のことだ
多分、昔の…これは、夢
『やぁ、そこのお二人さん。今から任務かい? 精が出るねぇ』
声を上げて言い合う私達の間に、するりと紛れ込んでくる穏やかな声
顔を上げれば、其処には片手を挙げて歩み寄るティエドール元帥の姿があった
ああ…確かこの時、初めてティエドール元帥と言葉を交わしたんだっけ
ユウの嫌がる"ユーくん"呼びも、この時初めて聞いた
『私はフロワ・ティエドール。君とは初めましてだったね。ユーくんがお世話になってるようだって、話は聞いてるよ』
『……ゆーくん?』
『ばっ…!』
そしたらユウの高速平手打ちが私の両耳を襲って、一瞬眩暈がしたんだっけ
凄く痛かった
バチン!って弾けるような音がして、両耳塞がれて
鼓膜が破れるかと思った
『ッ!?』
『忘れろ。今のは。空耳だ』
『ぁた…た…は? 何、急に…』
『忘れろ今のは空耳だ』
『はっ? い、痛い痛い!』
『こらこら、ユーくん駄目だよ。女の子に乱暴しちゃ』
『…元帥。その名で呼ぶなって言ってます』
嫌な呼び名なのはわかるけど、だからって両耳を強く引っ張るのはやめて欲しい
よくユウ相手に私の五感、支障きたさなかったなとつくづく思う
奇跡だな、うん