My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
前を進む、ロングコートの真っ黒な団服
足早に進むから、私は小走りで追うばかり
"待って"とは言わない
言っても嫌な顔をされるのは、わかってるから
『…神田、』
『んだよ』
『次の任務地は砂漠だから…水、持っていった方がいいよ』
『必要ない』
『必要ないって…それじゃイノセンス見つける前に脱水症になるから』
『ならねぇよ』
『そんなのわかんないでしょ。なってからじゃ遅いんだよ』
『うっせぇな。ならないもんはならないつってんだろ。人の心配より自分の心配でもしてろ。テメェが脱水症になったら、また置いてくからな』
『……』
親切心のつもりで言えば、やっぱり嫌な顔をされた
目が合ったのはほんの一瞬だけ
簡単に視線は外れて、再び背を向けてしまったから
もう目は合わない
前を足早に進むその背丈は、あまり私と変わらない
真っ直ぐ癖のない黒髪は、肩辺りで綺麗に切り揃えられていて髪紐で結んではいない
六幻の鞘を握る手は小さく、その顔と同じに幼い
…ああ、これ
言葉を交えるようになったばかりの、昔のユウだ
『…わからず屋』
『あ? 今なんつったテメェ』
『別に。何も言ってないけど』
『嘘つけ! わからず屋つっただろーが!』
『うわ、地獄耳! いっつも忠告は聞かない癖に、なんでそういうことだけ聞こえ…って痛い痛い! 引っ張らないでよ!』
『テメェが逃げようとするからだろ!』
『神田がそんな怖い顔で睨んでくるからでしょ!?』
全く耳を貸さないユウに、つい小さな声で憎まれ口を叩けば
ほんと地獄耳
普段は全く忠告聞かない癖に、こういう時だけ過剰反応するんだから