My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
口元の手を組み直して考える。
つい深く考え込みそうになって、コムイは目の前の存在に頭を切り替えた。
とにかく自分一人だけで考えても仕方ない。
雪の心をきちんと知り得ない限りは。
そして今、彼女にはそれだけ向き合う余裕がない。
心と体が不安定なのは誰が見てもわかる。
「とにかく雪くんの話はここまでだ。他にも気に掛かることはある」
「というと?」
「君達二人のことだよ」
雪に向けていた時とは違う、微かに鋭さを帯びるコムイの目。
それは問いかけてきたマダラオに迷いなく向けられていた。
「ティムキャンピーの映像とアレンくん達の報告で確認している。AKUMA側が作った魔導結界を素通りしただとか。フェイくんは中央庁からの護衛とだけ言っていたけど…君達、ただの鴉じゃないだろう?」
「「……」」
「黙秘する理由は?」
「…わたくし達は中央庁の命に従いますわ」
「いずれは説明されること。我々は名乗り出る許可を頂いておりません。今暫くお待ち頂きたい」
頭を僅かに傾け下げるマダラオに、コムイはやれやれと溜息をついた。
「仕方ないね…早めの報告を願うよ」
「御意」
「それじゃあ──」
今後の指示を出していくコムイ。
しかしその声は、雪の耳には届いていなかった。
唯一はっきりと伝わってくるのは、腕を掴む神田の手の感触。
全神経がそこに向いているようで、じっとりと嫌な汗を掻きそうになる。
緊張。
目は向けられない。
今ここで真っ直ぐに貫いてくるような神田の冷たい目を見てしまったら、立っていられなくなるかもしれない。