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My important place【D.Gray-man】

第42章 因果律



「君の身柄はひとまず勾留させてもらう。敵ではないと君が言っても、僕らにはまだそれは計り切れない。…結論はこの場では出せないけれど…君がノアだということは確認できた」


 凛と、コムイの声に強い響きが増す。


「この時点で月城雪をA級戦犯被疑者と確定する」


 ぴくりと、微かに雪の肩が震えたのが神田の目に映る。
 しかし当の本人は抵抗の言葉も何も発さず、口を閉じたまま。


「僕だけの決断だ、正式なものじゃない。だからそれ相応の処分はしない。雪くんとしっかり言葉を交えてから決める」

「決断は貴方一人のものではありません。教皇と、そして中央庁へも我々が報告致します」

「……ああ。わかっているよ」


 厳しくも聞こえるマダラオの言葉に、コムイは静かに目を閉じた。
 これは教団本部室長という自分の立場だけでは、解決できない問題だ。

 しかし。


(そうなれば…雪くんは)


 微かに眉間に力が入る。
 取り除けない不安。

 聖戦の為なら手段も選ばない上の者達は、果たして雪の存在をどう見るのか。
 最悪彼女に待っているのは死だ。


「……」


 瞑っていた目を開き、目の前の雪を見つめる。
 俯き加減に下に向いた目は、何も見ていない。
 唖然とした無に近い表情で頼りなくその場に立つ姿は、到底敵として戦ってきたノアのようには見えなかった。

 それよりも、初めて言葉を交わした、コムイが室長として任命されたあの日。
 クロス・マリアンの後ろに怯えるように隠れていた、幼き雪の姿を思い起こさせた。


(まさかあの日から…?)


 彼女はノアとして生きていたのだろうか。
 だからイノセンスの適性実験では不適合者となりながらも、命は落とさなかったのだろうか。

 クロス・マリアンはノアである14番目と関わりがあった人物。
 アレンの体を14番目が宿主に選んだことも知っていた。
 もしかすると雪もまた、アレンのようにノアの宿主として選ばれたのか。
 そうだとすれば。


(道はある。…かも、しれない)


 最悪の死刑宣告は、間逃れるかもしれない。

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