My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
「…君の心中が理解できない訳じゃないよ」
唇を噛んで黙り込む雪に、コムイが静かに息をつく。
「ノアであることを教団(僕ら)に知られれば、命だって危うくなる。簡単に自分の身は曝け出せない」
「……」
「でも僕には疑問なんだ。それなら何故、そこまでして教団に君は居続けたのか。そんな命の危険を冒してまで此処にいる意味は? 同じノアである者との接触を図る為でないなら、何故?」
コムイの問いは的確だった。
的確で、教団の者としてなら当たり前に疑問に思うこと。
「君の御両親が教団と深く関わりがあったことは知っている。でもそれだけの理由で、命を天秤に懸ける必要はあるのかい?…そうして消去法でいけば、辿り着く結論は一つだ。…教団を内部から滅する為──」
「違うッ!」
(そんなこと考えてないッ!!)
「私は──!」
更に一歩雪が前に踏み出した時、後ろから肩を強い力で掴まれた。
「ぁう…ッ!」
それが誰か確認する間もなく、肩を押され手首を後ろに捻られる。
上半身を前のめりに倒す形で、無理矢理に腕の関節を絞められ動きを封じられた。
「動くな」
背後から届く低い声。
それは見張りとして傍についていたマダラオのもの。
「…ぁ…」
ではなかった。
首を捻る雪の目に見えたのは、無表情に見下ろしてくる黒曜石のような瞳。
マダラオより離れたソファに座っていたのに、いつの間に傍に来ていたのか。力で押さえ拘束してきていたのは、エクソシストである神田ユウだった。