My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
「……」
ノアと認めた回答の後、すぐにはコムイは反応を示さなかった。
ただ一つ、聞こえたのは微かな溜息。
雪の体が強張る。
些細な彼の言動一つが、自分の対処へとどう変わるのか。
そこに恐怖を感じて。
「…そうか」
やがてぽつりと目の前の彼の口から落ちたのは、落胆にも似た声色だった。
「だから…うん。それなら説明がつく」
(説明…?)
なんのことかわからず、恐る恐るコムイの顔を伺う。
口元ばかり見ていた目線を上げれば、眼鏡の奥の瞳を机に落とすコムイの顔を、雪はやっとの思いで見ることができた。
「街中で以前あったノアとの接触。何故雪くんを狙ったのか、少し不思議に思ってたんだ。…そういうことだったのか」
手を組み返して口元に寄せ、難しい表情を見せる。
そんなコムイの口から続け出た言葉に、雪は咄嗟に一歩踏み出していた。
「ち…っ違います!」
それはつまり、仲間として接触したと思われているのか。
自分は、ノア側の者だと。
「あの時、あのノアの二人は私に気付いていませんでした…ッわ…私、が……ノア、だって…こと」
ノアだと名乗ることについ躊躇して、言葉を濁してしまう。
それでも声を上げて反論する雪に対し、コムイは冷静だった。
「というと…仲間内には秘密にして教団に?」
「ち…」
(違う…!)
「私は…ッ仲間じゃありませんッノアの仲間なんかじゃない!」
一度だって仲間だと思ったことはない。
強く首を横に振る雪の姿を、コムイはじっと感情の読めない表情で見つめていた。
「じゃあ何故黙ってたんだい? アレンくん達の話だと、君の事情を知る者は誰もいなかったそうだ。…この教団で君のことを知っている者は?」
「…それ、は…っ……」
「いない。そうなんだろう?」
「……」
否定できない。
自分はそれを、ひた隠しにしてきたのだから。