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My important place【D.Gray-man】

第12章 黒の教団壊滅事件Ⅴ.



「…誰だテメェ」


 これは月城じゃない。
 月城の姿をしてるが、喋ってる奴は他の何かだ。

 幽霊なんてもん早々信じる気はないが、存在を否定はしない。
 任務でそういう類を見たこともある。
 これは恐らく、そういう類のもんだ。


「わすれた…なまえなんて、おぼえてない。からだといっしょに、きおくもぐちゃぐちゃになった」


 睨み付けても、そいつは口元に笑みを浮かべたまま。
 作ったような笑みは月城がよく取り繕うように笑っていた、それと重なる。
 だがそれ以上に、その笑みは見ていて苛立った。


「でも、いたみはおぼえてる。うらみはおぼえてる。ぼくらをここに、とじこめた」


 僕"ら"?

 複数形で話すそいつの言葉は、月城の体に無数に取り付いた手の跡と繋がる。


「ぼくらは、できそこない。かみにえらばれなかった。それはこのこも、いっしょなのに」

「出来損ない…?」


 "神に選ばれなかった"
 その言葉にピンとくる。

 昔この教団で行われていた、使徒を作る実験。
 イノセンス適合者の血筋の奴らが、咎落ちになるまで実験させられたと聞いた。

 "咎落ち"

 それは不適合者に、無理矢理イノセンスを同調させることで起きる現象。
 イノセンスに体を取り込まれ、24時間以内に命を消費し尽くされて死に至る。

 覚えていたのは興味があったからじゃない。虫唾が走ったからだ。
 俺とアルマにしたことと、なんら変わりない。聖戦の道具としか見ていない、教団の行いに。


「なのにひとりだけ、いきてるなんてずるいでしょ」


 こいつの言うことが本当なら…月城もその血筋の人間だったってことか。


「…チッ」


 苛立ちが増す。
 大方、教団に恨みを持った霊魂が月城にでも取り憑いたのか。
 教団の人間を怨もうが呪おうが、そんなこと俺にはどうでもいい。

 ──だが。


「恨む相手が違ぇだろ。テメェと一緒だった奴を、テメェで傷付けんなよ」


 そんなことして後に残るのは、










"ごめん…、…アルマ…"










 虚無だけだ。

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