My important place【D.Gray-man】
第12章 黒の教団壊滅事件Ⅴ
「チッ」
苛立ちが増して、つい舌打ちをする。
さっきからしらみ潰しに捜しているのに何処にも月城の姿はない。
何処行きやがったんだ、あいつ。
「ゾンビなんざ、ふざけたもんになってたら殴ってやる」
朝方の病棟の廊下は、時折ゾンビが徘徊していた。
そいつらを潰しながら進むが月城の痕跡らしきものはない。
…この際、あいつを置いて教団からの脱出を図ってみるか。
「……」
浮かんだ案は即座に頭の中で却下された。
そんなことで月城に恨み化けてでもされたら困る。
「腹でも空かして、厨房でも行きやがったか…」
あいつが行きそうな所。
それを考えようとして思考は止まった。
あいつが行きそうな所に、思い当たるような節が何もなかったからだ。
普段あいつがなんに興味を持って、なんの為に生きているのか。
俺は何も知らない。
知らなくても平気だった。
足出纏いになるなら置いていけばいい。
そう思っていたからだ。
「…チッ」
なのに今の俺の足は教団の外には向かわない。
そんな状況につい、また舌打ちする。
任務以外でのあいつと過ごしたことなんてなかった。
腹の音に笑ったり、下らない晩餐の話に遠い顔をしたり。どれも俺の知らない顔で、どれもどこか胸の奥につっかえた。
この感情は、どことなく知っている。
《 笑ってんじゃねーよ、キモアルマ…っ 》
《 うるさい、根暗…っ 》
初めて、腹を抱えてアルマと笑った時。
初めて、あいつの存在を嫌に思わなくなった時。
酷く息がし辛かった世界で、少しだけ楽になった気がした。
少しだけ、あいつの存在に救われた。
初めて感じた、他人を思う気持ち。
それに…この感情は似ている。