My important place【D.Gray-man】
第12章 黒の教団壊滅事件Ⅴ
「…あいつを見つけたら即脱出だな」
手間は掛かるが、元々月城にゾンビになりかけたところを救われた。
あいつの言葉を真似る気はないが、恩を借りたままでいんのは気に入らない。
溜息混じりに踵を返す。
とにかくしらみ潰しに捜すしかないと、目の前の長い廊下の角を曲がった。
「──!?」
見えた光景に一瞬目を疑う。
「…誰の悪戯だよ…」
視界に飛び込んできたのは、夥(おびただ)しい程の赤。
病棟の窓や壁、果てには天井にまで、至る所に張り付いている赤い人の手形。
ぽたりと、天井の手形から赤い雫が滴り落ちる。
血のようなそれは見覚えがあった。
『多分ゾンビの皆に襲われた時、誰かの手形が付いたんだよ』
恐怖心を隠すように、笑っていた月城の背中。
そこにはっきりと付いていた赤い手形。
此処にあるのは、それと同じもんだ。
「…ゾンビの仕業じゃねぇな」
赤い手形で真っ赤に染められた廊下を進む。
辺りにゾンビ化した奴らの気配は感じない。
そういや通気口から出て、降り立ったトイレの中で確かに聞こえた誰かの足音。
あの音は月城も恐らく聞こえていたはずだ。
あれは、誰のもんだったのか。
──ひた
僅かに耳に届いた足音。
それはトイレで聞いたものとは違っていた。
ひた、ともう一度。
素足で歩くその姿に、思わず足が止まる。
「…月城?」
其処にいたのは、確かに捜していた月城だった。