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My important place【D.Gray-man】

第11章 黒の教団壊滅事件Ⅳ.












「いた…ッ」




 じくじくと両手が痛む

 見下ろせば、真っ赤な二つの手

 完治していない皮膚が至る所裂けていて、新しい血が溢れる

 また駄目だった




「いたいよ…いたい…」




 そんなこと言っても、痛みが退く訳じゃない

 でもとにかく口に出していないと

 何か喋って気を紛らわせていないと

 熱く鋭い痛みに、心が潰れてしまう




「おとうさん…」




 ねぇ、お父さん

 なんでこんなもの残していったの

 お父さんが残してくれた唯一のものは

 いつも私を拒絶する




「っ…ふ…、ぅ…ッ」




 ぽたぽたと涙が真っ赤な両手に落ちる

 思わずその手で顔を覆えば

 腕に繋がれた管が引っ張られて、周りの機械が音を立てて揺れた




「ッ…おかあさん…」




 なんで迎えに来てくれなかったの

 ちゃんといい子にしてたのに

 なんでお父さんと、いつも一緒にいっちゃうの




「雪ちゃん、検査の時間だよ」




 重い扉が開く

 いつも此処が開くのは、ご飯の時か、適性実験の時か、身体検査の時




「今日はお腹を見るからね。大丈夫、すぐ終わるから」




 顔を覆っていた手を退けて

 見えたのは、笑顔


 "大丈夫"


 その言葉は、私の呪文




「いたいのは…いや、」

「大丈夫、痛くないよ。ちゃんとお注射するから」




 体を幾度も弄られる時の、呪文




「おてて、痛いよね。でもそれだけで済んだのは、凄いことなんだよ。いつ咎落ちになってもおかしくないのに」

「とがおち…?」

「それだけお父さんが雪ちゃんを受け入れてる証なんだ」




 彼らが紡いでくれる言葉は、いつも優しいけれど

 注がれる目は小母さん達と同じ

 私を見ながら、私を見ていない




「だから頑張ろう」




 頑張るって何を?

 お父さんは私を受け入れてくれてるのに

 じゃあなんでいつも拒絶されるの?




「おとうさんのこと…いつになったら、おしえてくれるの」

「雪ちゃんが沢山頑張ったら、教えてあげる」




 沢山ってどれくらい?

 そう問い掛けても、彼は優しく笑うだけだった









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