My important place【D.Gray-man】
第11章 黒の教団壊滅事件Ⅳ.
──ほう、彼の娘なのか
待っているだけじゃ何も始まらない。
そう悟った、まだ体も幼い頃。
私は一人、黒の教団の門を潜った。
──心して聞いて欲しい
──君のご両親は…
父と母の死。
其処で突き付けられた現実。
──エクソシストの情報は、重要機密なんだ
──家族であっても、詳細は伝えられない
なんで。
どうして。
二人の死も受け入れられないままに拒否された。
その死因さえもわからない。
──ただ一つ
──君が我々に協力してくれるなら
──その情報を与えよう
知りたかった。
どんな些細なことでもいい、二人のことなら。
何も知らなかったから。
──さぁ、おいで
条件として課せられたのは身体実験。
エクソシストの血筋の私は、同じイノセンスの適合者と成り得るかもしれない。
そう、その人達は言っていた。
──もし君にその素質があれば
──父親のような立派なエクソシストになれるだろう
エクソシスト。
そこに憧れや尊敬なんて、私にはなかった。
ただ、それで父に近付けるなら。
父を知ることができるなら。
──少し体を調べるだけだよ
──楽にしておいで
通されたのは暗い部屋。
つんと鼻を突いたのは鉄の臭い。
隅にぽつんと置かれた、小さなベッド。
其処には、何かがずっと置かれていたのか。
乾いたシーツに、古い染みを付着させていた。
──大丈夫、
体に繋げられたのは、名前も知らない様々な機械の管。
微々たる兆候も見逃さない為に、必要だと彼らは言った。
──大丈夫、
腕に刺されたのは、名前も知らない注射。
浸透率を上げる為に、必要だと彼らは言った。
──大丈夫、
そしてキラキラと光る、不思議な結晶を見せられた。
嘗てはその手足となり教団の為に働いたという。
父のイノセンス。
──大丈夫、
何度も口癖のように繰り返して。
彼らは優しく笑っていた。
"大丈夫"
それは私の呪文となった。