My important place【D.Gray-man】
第11章 黒の教団壊滅事件Ⅳ
──ほう、彼の娘なのか
待っているだけじゃ何も始まらない。
そう悟った、まだ体も幼い頃。私は一人、黒の教団の門を潜った。
──心して聞いて欲しい。君のご両親は…
父と母の死。
そこで突き付けられた現実。
──エクソシストの情報は重要機密なんだ。家族であっても詳細は伝えられない
なんで。どうして。
二人の死も受け入れられないままに拒否された。
その死因さえもわからない。
──ただ一つ。君が我々に協力してくれるなら、その情報を与えよう
知りたかった。
どんな些細なことでもいい、二人のことなら。
何も知らなかったから。
──さぁ、おいで
条件として課せられたのは身体実験。
エクソシストの血筋の私は、同じイノセンスの適合者と成り得るかもしれない。
そう、その人達は言っていた。
──もし君にその素質があれば、父親のような立派なエクソシストになれるだろう
エクソシスト。
そこに憧れや尊敬なんて、私にはなかった。
ただ、それで父に近付けるなら。
父を知ることができるなら。
──少し体を調べるだけだよ。楽にしておいで
通されたのは暗い部屋。
つんと鼻を突いたのは鉄の臭い。
隅にぽつんと置かれた、小さなベッド。
そこには何かがずっと置かれていたのか、乾いたシーツに古い染みを付着させていた。
──大丈夫
体に繋げられたのは、名前も知らない様々な機械の管。
微々たる兆候も見逃さない為に、必要だと彼らは言った。
──大丈夫
腕に刺されたのは、名前も知らない注射。
浸透率を上げる為に、必要だと彼らは言った。
──大丈夫
そしてキラキラと光る、不思議な結晶を見せられた。
かつては手足となり教団の為に働いたという、父のイノセンス。
──大丈夫
何度も口癖のように繰り返して、彼らは優しく笑っていた。
"大丈夫"
それは私の呪文となった。