My important place【D.Gray-man】
第11章 黒の教団壊滅事件Ⅳ.
✣
「…あ、れ」
此処、何処だろう。
「…?」
倒れていた体を起こして辺りを伺う。
真っ暗な部屋。
つんと、鼻を突いたのは鉄の臭い。
確か私、何かに恐怖して──
「っ」
思い出した。
何処かの病室の窓。
視界いっぱいに映った、白くて細い手。
思わず鳥肌が立って、自分の体を抱きしめる。
あれは幻なんかじゃなく…確かに目の前にあった。
──ひっく、ぅ…っ
「──!」
刹那、聞こえたのは微かな泣き声。
思わず其処に目を向ければ、ぽつんと部屋に一つだけ。
小さなベッド。
──いたいよぉ…いたい…
くぐもった声は、苦しそうに。
小さなベッドの上に、こんもりと小さな膨らみ。
声はその布団の中から聞こえていた。
「…誰…?」
恐る恐る問いかける。
それでも布団の中から聞こえるのは、啜り泣くような幼い声だけ。
──おうちに、かえりたいよぉ…かえらせて…
苦しそうに泣く声は、縋りつくように。
その言葉に胸がぎゅっとなる。
「…大丈夫?」
そっとベッドに歩み寄る。
近付けば、その小さな布団の塊はぶるぶると震えていた。
ベッドの周りには、沢山の液体パックが繋がれた機器。
その管は全て布団の中へと続いていた。
──いたいよ…いたい…もういやだ…
耳を澄ませば、その声は知らない男の子の声。
痛い痛いと泣くその声だけが、暗い部屋に木霊していた。
…ああ、なんだか。
私はこの泣き声を、知っている気がする。
「…どこが痛いの?」
その痛みを、知っている気がする。
「専門じゃないけど…手当てくらいなら、できるかもしれないから…」
布団を捲ろうと、そっと手を伸ばす。
──…ぜんぶ
その時。
布団の中から伸びた小さな手が、私の手首を掴んだ。
真っ白な小さな手は、骨と皮だけのように細くて。
──ぜんぶ、いたい
じわりと、その手が触れた部分から赤が溢れた。
赤?