My important place【D.Gray-man】
第11章 黒の教団壊滅事件Ⅳ.
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「太り過ぎだろ、テメェ」
履けば余裕のあるズボンのウエストに、溜息混じりにベルトでそれを締める。
床に転がってるそいつは、拳を一発打ち込めば易々と意識を飛ばした。
警護班だろうが、もっと体鍛えとけよ。
「恨むなよ」
見下ろす体は引ん剥いたお陰で裸同然。
警護班専用のジャケットに腕を通して、具合を確かめる。
恨むなら、この馬鹿げた状況を作り上げた張本人のコムイを恨めよ。
「──さて、」
偶々部屋の前にいたゾンビから服を借りて、改めて辺りを見渡す。
薄暗い廊下に他のゾンビは見当たらない。
…一人で出ていった月城は、何処に向かったのか。
そもそも、なんの為に黙って出ていったのか。
それがわからない。
「…トイレか?」
それでもわざわざ黙っていくか、普通。
何かあった時の為に、最低限の連絡はしていく。
寧ろ任務中は、俺にそうしろと煩く注意してきていた奴なのに。
「……」
そもそもなんで、あいつが起きた時に俺は目覚めなかったのか。
あんなすぐ隣で寝ていた奴が起きたら、目が覚めてもおかしくないはずなのに。
「…薬の所為だな」
科学班の妙な薬で体を小さくさせられて、普段より体が疲れていたから起きなかったんだろう。
そう自分で結論付けて、どことなく足を踏み出す。
とりあえずトイレからしらみ潰しに捜すか。
──ひた、
素足で廊下を歩く足音。
その僅かな音に振り返る。
月城?
「…グルル、」
見えたのは薄暗い廊下の奥。
他のゾンビより遥かに鋭い牙を持って、呻く顔。
「……またかよ」
素足の正体は月城じゃなかった。
上半身裸に、黒と白の髪した頭。
その背中には蝙蝠の翼みたいなもんが生えていて、明らかに他の奴とは違う面妖な姿。
そいつは周りをゾンビに変えた、感染源である吸血鬼。