My important place【D.Gray-man】
第11章 黒の教団壊滅事件Ⅳ
──ひた、と。素足で廊下を歩く足音。
その僅かな音に振り返る。
「月城?」
見えたのは薄暗い廊下の奥。
他のゾンビより遥かに鋭い牙を持って、呻く顔。
「…またかよ」
素足の正体は月城じゃなかった。
上半身裸に、黒と白の髪した頭。
その背中には蝙蝠の翼みたいなもんが生えていて、明らかに他の奴とは違う面妖な姿。
そいつは周りをゾンビに変えた、感染源である吸血鬼。
この教団内で、恐らくワクチンを作れる奴でまともな奴はもういない。
此処でこいつを倒しても、この馬鹿げた状況が解決するとは思わない。
だが。
「いいぜ。今度は返り討ちにしてやるよ」
薬で体が縮んでいた時は、こいつに簡単にやられてしまった。
あの時のリベンジでもさせてもらうか。
「来いよ、クロウリー」
体を向けて、僅かに口角だけ上げて呼びかける。
「ガァアアア!!」
瞬間、弾けるように廊下の奥から飛び出してきたそいつに、打ち込まれる拳を想定して身構えた。
月城、少し待ってろ。
こいつを倒してからテメェの捜索だ。
だからそれまで無駄に余計なことはすんなよ。