My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
「ぴぇええええ! 院長先生ぇ~っ!!」
「力尽くはいけませんわ」
「そうよ! 貴方人の心ないの!?」
「あ? うっふぇえな。いいはらそいふをよこ」
「こいつ本当に口下手で! 悪気はないんで!!!」
泣き叫ぶガキを守るように抱きしめる院長。
その隣でぎゃんぎゃんと噛み付いてくる女がうざくて言い返せば、更にマリの口と腕を掴む手の力が増した。
オイだから邪魔すんな。
その言い訳は聞き飽きたんだよ、そもそも誰も聞いちゃいねぇだろ。
「これは一旦コムイさんの指示仰いだ方がいいな…」
ガキと共に縛られているモヤシが、院長の腕の中で溜息混じりにぼやく。
コムイが教団内で最高責任者の立場になってからは、多少は柔らかく融通を利かせるようになった組織。
それでもコムイの上の立場である教皇は、何も変わっちゃいない。
どうせ結果は強制連行なことに変わりないだろうが、コムイなら此処の連中を納得させられる案を思いつくかもしれない。
…チッ、仕方ねぇな。
「おいふぉらはなへ」
「…なら暴言は吐くんじゃないぞ」
口を塞がれたまま離せとマリを見上げれば、渋々とその大きな手は退いた。
その時。
「──!?」
ふっと、まるで電灯が消えるかのように窓の外の光が全て消えた。
窓の外の光は太陽光だ。
こんなスイッチを切るように光が消え去るはずがない。
「あら、外が…?」
「まだ昼よね?」
「まさか…っ」
「しまった…!」
不思議そうに窓の外に目を向ける院長達とは裏腹に、俺達の間で緊張が走る。
窓の外を覗けば、外は真っ暗闇だった。
真っ暗なだけじゃない。
周りの煉瓦道や木々、建物なんかも全て消え去っていた。
まるで異空間にこの孤児院だけ迷い込んだかのように。