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My important place【D.Gray-man】

第11章 黒の教団壊滅事件Ⅳ.



 目を開ける。
 最初に見えたのは、顔を押し付けている白いシーツ。


「……」


 久しぶりに、夢を見た。
 魘されて飛び起きていた、あの時の夢とは違う。










"大丈夫? また魘されてたね"










 飛び起きて冷や汗の掻いた手を凝視すれば、あいつはいつもそう気にかけてくれた。










"ごめん、起こしたか"

"気にすんない"










 ヘラ、と懐っこそうな独特の笑みを浮かべて。
 そんなあいつの隣で寝るのは、割と心地良かった気がする。


「……はぁ」


 久しぶりに、夢を見た。
 魘されていたあの夢とは違う。

 心地良い真っ暗な闇。
 意識の更に下にある、深い深い闇の中。

 久しぶりに、頭はぐっすりと寝落ちていたらしい。
 体を起こして、自分の髪をくしゃりと掴んで頭に手をつく。
 こんな状況下で熟睡しちまうなんて。

 エクソシスト。

 そんなもんになったから、常に命を張ることは多い。
 だから寝ていても些細な物音がすれば自然と目が覚める。
そんな習慣が身に付いていた。
 なのになんで、こんなにぐっすり寝ちまったのか。




「……月城?」




 頭に手を付いたまま、急に思い出す。
 はっと顔を上げて薄暗い部屋を見渡せば、その姿は何処にもなかった。


「あいつ…ッ」


 部屋にあったもんで壁を作ったドアは、変わらず堅められたまま。
 それでも少しだけ棚をずらして作られたスペースは、あいつが出ていく際にできたものか。

 何勝手に出て行ってんだ、あいつ…!


「──!」


 舌打ち混じりにベッドから降りようとして、体の異変に気付く。
 飛び下りなくても床に着く足。
 見慣れた高さに戻っている目線。

 ──体が元に戻ったのか。




 ズル…




 布か何かが擦れるような音。


『ハァアァ…』


 部屋の外。
 割と近くに聞こえる、微かな呻き声。

 …ゾンビ化した誰かか。


「…はぁ」


 窓の外を見る。
 未だに衰えてない雨は窓硝子を叩き付けていて、薄らとだけ明るい外はどうやら朝を迎えていたようだった。

 それでもどうやら、ゾンビに眠りは来ないらしい。

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