My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
「今から怪盗Gの捕獲をしに行くんだ。そんな時に仲間割れなんてしてどうする」
「全く……どうしたらこうも毎回いがみ合えるんですかね…」
肩を落とすマリの後ろで、深々と溜息をつくのは鴉野郎。
「こんな所で騒ぎ立てていたら、それこそ怪盗Gに逃げられますよ」
その呆れた目が俺達から、後ろの建物に向く。
視線を辿るように見上げた建物は、周りの民家より多少大きな造りのもの。
その分厚い煉瓦の壁には"HEARST DRPHAN ASYLUM"と書かれた看板が掲げられていた。
──"ハースト孤児院"、か。
まさかマリが追った怪盗の声の出所が、孤児院だったとはな。
「…ほんとに此処なの?マリ」
「ああ。昨夜のGの泣き声は此処で途絶えた」
不思議そうに看板を見上げて問うモヤシに、深くマリが一度だけ頷く。
マリの聴覚の追跡能力は実力と共に信頼性がある。
マリがそう言うなら、此処に少なからず怪盗Gの痕跡は残されているはずだ。
「とにかく訪ねてみましょうか」
「先程のように急に喧嘩は売らないように。相手が怪盗Gであっても、此処は孤児院です。下手に煽らないよう注意して下さい」
「はいはい、わかってますよ。またGに乗っ取られたら大変ですもんね、リンク」
「二度とあんな失態は犯しませんっ」
孤児院の玄関先に向かうモヤシの後を、声を荒げながら鴉野郎が追う。
昨日のGに乗っ取られて曝したみっともねぇ姿を思い出してんのか、その口調はきつい。
そんな鴉野郎に振り返りながら、モヤシは爽やかな程に良い笑顔で笑った。
「リンク、まだ昨日のこと気にしてんですか?」
「してませんよ。あの映像を買わせようとしたこと以外は!」
その手がドアノブにかかると、呆気なくカチャリと音を立てて回る。
「だから格安にしてあげたでしょ…あ。開いてる。すみませ──」
「エロガキがァアアア!!!!」
開いた扉の中。
其処にモヤシが一声かけた途端、上から被さるように響く罵声。
ゴッ…!
それと鈍い打撃音は同時に起こった。