My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
ずっと仏頂面でいるオレに、ガルマーとエミリアの口喧嘩を聞きながらやんわりと声をかけてきた。
『どうしたの? そんな顔して…お腹でも痛いのかしら?』
それが院長先生がオレにかけてきた最初の言葉だった。
お腹痛いって。
ちげーよ。
『親父(あいつ)の所為でオレの人生滅茶苦茶だ…こんなオデコした奴、他にいねぇもん』
オレのこの額の変な玉を見ると、ガルマーも、医者も、他の警察も、周りの大人皆、一瞬変な顔をする。
変なもんを見る目でオレを見て、それからすぐに取り繕うように優しく接してくる。
その態度が嫌いだった。
エミリアだってそうだった。
すぐに普通の態度で話しかけてくれるようになったけど…でも初めてオレを見た時は、この玉に驚いてすぐに"可哀想"って目で見てきてた。
それがすげー嫌だった。
…この院長先生だってそうだ。
どうせ変な目で見るか、可哀想だって同情の目で見るか。
そのどっちかなんだろう。
『おでこ、お顔洗う時邪魔じゃない?』
絶対そうだと思っていたから、返された言葉はそのどっちとも違っていて思わず拍子抜けた。
顔を洗う?
何言ってんだ、この人。
『はぁ?』
『ホラ、朝はお顔洗うでしょ? こうやって。ザバーってして、ゴシゴシーって。ちゃんと洗えるの?』
『あ…ッ当たり前だろ! 馬鹿にすんな!』
ちっさいガキに問いかけるような身振り手振り混じりの言葉に、ついむかついて怒鳴り返した。
そんなオレに院長先生は驚くこともなく、両手をぽんと合わせて笑ったんだ。
『そう。じゃあ何も問題ないわね』
同情でも哀れみでもない。
本当になんにも気にしてない顔で。
『大丈夫よ、ティモシー』
そう、笑ったんだ。