My important place【D.Gray-man】
第2章 空白の居場所
「うーん…どうしよう…」
神田の団服のローズクロスでも見せれば、乗せてくれるかな…。
そんなことを考えながら辺りを見渡していると。
「遅い」
「ぃたッ」
急にべしんっと頭を叩かれた。
い、痛いっ。
「ちょ…っ待っててって言ったのに」
「お前が遅いからだろ。馬車の一つも捕まえられねぇのか」
思わず頭を押さえて振り返れば、案の定眉間に皺寄せた神田が其処にいた。
そのすぐ頭叩く癖止めてくれないかな。
手頃な位置にあるから叩き易いんだろうけど、される方は堪ったもんじゃない。
こんなにバシバシ叩いてくるから、最近任務中によく頭痛がするのかもしれない。
うん、神田の所為だ。
そういうことにしておこう、この際。
「仕方ないよ。多分殺人鬼か何かが出るっていう噂でも流れてるんじゃないかな。皆怖がって乗せてくれないから」
「…チッ」
すると神田は苛立ったように舌打ちして、一つの馬車に近付いて──…って待って待って!
「オイ。この先の墓地まで二名」
「墓地? ああいやお客さん、丁度今は休憩中で」
「つべこべ言わずに二名だ。さっさと連れてけ」
やっぱり…!
気まずそうに首を横に振る従者の襟首を掴んで、凄む顔は視線で人を殺せそうなくらい威圧感満載。
美形をここまで脅迫顔に変えられるのって、ある意味尊敬する。
というかそれ脅しだから!
「わ、わかりました。わかりましたよッ」
ヒィッと悲鳴を上げて、従者が慌てて頷く。
途端に興味を失ったように神田の手は離れた。
ああ、もう。
「すみません…っ」
慌てて従者に頭を下げる。
こうして、神田が何かと迷惑かけた人々に謝罪して回る。
これも私の仕事の一つになっている気がする。