My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
寝転がったまま、ズボンのポケットから取り出した新聞の切れ端を目の前に翳す。
朝日に透けて少し読み難いその記事には、写真が載っていた。
頭に国宝の王冠なんて被せちゃって、ドヤ顔で調子乗ってポーズ取ってるガルマーの姿が。
「ちぇっ」
"ガルマー警部、怪盗Gから国宝見事死守!"と書かれた大きな記事。
つい顔が歪む。
ぬぁーにが"ガルマー警部見事死守"だよっ!
死守したのはガルマーじゃねぇだろ、あの訳わかんねぇ黒尽くめの男達だ!
「黒尽くめのあいつらさえいなけりゃ、もっと稼げたのに…!」
ビリビリに破いた記事を散らすように空中に放る。
何度思い出してもむかつく…!
あれは警察じゃなかった。
頭から足まで真っ黒な変な服着た連中だった。
…違った、一人は頭は真っ白だったな。
まるで爺さんみたいだった。
もう一人の女みたいな顔した男は、頭から足まで全身真っ黒だったけど。
女みたいな顔してたけど、あいつの方が怖かった気がする。
なんたって殺気が半端なかった。
白髪頭の方が、喋り方は丁寧だったし──
『僕は最低だと思うよ。君の所為でGにされた人達のこれからの人生、滅茶苦茶になるんだ』
「……」
『君、最ッ低だよ』
「…けっ!」
思い出した、あの白髪頭の説教垂れた台詞。
むかつく。
ぬぁーにが最ッ低だよッ!
人の事情も知らねー癖に!
オレがこの能力(ちから)を使って怪盗をやってんのは、ハースト孤児院を救う為だ。
良いことに金を使ってんだよ。
どっかの金持ちが宝石見てひたすら愛でてるより、よっぽど価値ある使い方だ。
「あー…っむしゃくしゃするッ」
エミリアに見つかるとダメだから、大声は出せない。
怒鳴り散らしたい気持ちを抑えて、ガバッと体を跳ね起こした。
わしゃわしゃと怒り任せに頭を掻けば、ずれたバンダナから額が覗く。
はっとして押さえ込んだ。
布越しでもわかる、額のその硬い感触。
オレはもうすっかり見慣れたけど、"これ"を知らない奴らが見たら気味悪そうな顔をするから。
だからいつもこのバンダナで隠してる。
この額にあるのは──…でっかい不恰好な偽モンの宝石だ。